いちごいちえ

山のこと。思う。感じる。

東山三十六峰マウンテンマラソン2016(後編)

前編を書いてから、慌ただしく年を越し、あっという間に3月に突入していました。
今更ですが、続きです。


〈スタート~宝ヶ池~比叡山中腹~北白川〉

スタートを切ると、文香ちゃんとトッキーくんが沿道で応援してくれていた。
トッキーくんが私を見つけてくれて手を振った。
宝ヶ池に向かう途中で二宮さんを見つけ、挨拶代わりに手を上げてすれ違った。
宝ヶ池は朝日が射し込みキラキラと清々しい。キリッと冷えた空気が気持ち良かった。
宝ヶ池をぐるっと1周してスタート地点へと駆け抜ける。

少し寝不足ではありながらも、鉄分のサプリを摂取して寝たからか体調がいい。
いつも寝不足のまま走ったり登山に行ったりすると、よく貧血になり気分が悪くなってしまうので効果覿面だった。
公園を後にし、川沿いの道を宝ヶ池駅方面へと進む。交通量の多い国道にさしかかり、歩道橋を歩いて渡る。
焦る気持ちを抑えつつ、「最初はとばしちゃダメ」というときちゃんのアドバイスを守り、ペースを守りながら走った。

住宅街の緩やかな坂道を上り、いよいよ森の中へ。
登りはやはりしんどい。でもできるだけ歩かないようにタイミングを見て前に出るように足を進めた。

秋に試走したので途中から見覚えのある景色が現れた。この付近で以前走った時にグローブをなくしたなぁと思い出しながら、ないに決まっているのに「あったらいいのになぁ」なんて思いながら走る。
杉林の登りを登り切ると、ダートの道と石鳥居が現れる。
ここから京都一周トレイルに入る。走るのがとても気持ちの良いトレイルで、好きな道だ。
体力も余裕があり、無理なく飛ばせそうなコンディションなのに、前が混んでいてなかなか進まない。もどかしい気持ちのまま、隙を見ては追い越し、前に詰まり、そんなことを繰り返しながら、行列は連なり北白川へ下りた。


〈北白川~大文字山~日向大神宮〉

北白川へ下りると、アスファルトの道路の端を走る。
住宅街の細い路地を縫いながら裏道を上っていくと、最初のエイドである京都挑戦中高級学校に出る。
そこに尾崎さんがいた。「しんどーい」「しんどいよねー」と声を交わしながら、
ポカリをおかわりして、バナナを一切れいただき、また走り出す。

校庭を横切り、大文字山の登山道に入る。観光客も多く人をかき分けながら進む。
いつ来ても、この登りはしんどい。
階段の段差も高く、息が上がる。あっという間に火床にたどり着きそうなイメージだけど、この区間が地味に長い。さらに火床から山頂までもある程度の距離がある。
大文字山を甘く見ている自分がいるのか、「すみません。」と思いながら進む。
一般の登山客も多い山なので、スタッフの人が選手が続いて登るのを中断して道を譲るよう促していた。
この日に大会を知らずに登ってきた人達は迷惑だっただろうな。お邪魔しました。
幸いすれ違う人達はみなさん「がんばってー」「すごいねー」と応援してくださった。
こういう声が励みになって、疲れている足にパワーがみなぎる。嬉しいな。

大文字の頂上も止まらずに下り道に入る。
「すごい。膝が痛くない!気持ち良い!!」夏から秋にかけて膝痛にしばしば悩んでいたので、気持ち良く走れる体がこの上なく嬉しかった。
走っていると、分岐点の手前でスタッフの人が立っていた。
なんだろうと思うと、なんと、コーラの差し入れ。こんな山の中まで運んで差し入れをしてくれるスタッフの方に感謝しながらいただいた。これがすっごく美味しかった。
さらに下り、天の岩戸を過ぎ、神社の境内が見えてきた。
京都のお伊勢さん「日向大神宮」。初めて大文字山に登ったときに訪れた場所で、思い出深く、慎ましい佇まいがとても好き。
境内の階段を下りると第2エイド。
そこで「いちごちゃん!」と呼ばれる。声の方向を見ると居るはずがない西さんがいる。
聞くと足を挫いてDNFだと言う。まさかと思った。
Stravaで走り込んでいるのを知っていたし、本気で記録を狙ってられた姿を見ていただけに、私まで残念だった。
本人が1番悔しいはずなのに、笑顔で送り出してくれる西さん。爽やかすぎます。男前です。
ぐっと力を入れ直し、日向大神宮を後にした。


三条通~将軍塚~清水山〉

坂道を下り、蹴上疎水にかかる橋を渡り、三条通を左に曲がる。
しばらくすると東山ドライブウェイへ続く坂道が見えてきた。
東山ドライブウェイの入口に、Run&WalkStyleのガンバフンバ隊を発見。
お店で購入したエネルギージェルをいただきながら走っていたので、心の中で「ありがとう」と呟きながら走った。

いよいよ後半の正念場。将軍塚まで続く東山ドライブウェイの長い坂道が始まった。
ときちゃんがスタート前に「ここではみんなに抜かされても、吊られることなくマイペースを貫くことが大切」とアドバイスをもらったので、ゆっくりでも止まらず、歩かず、走るペースを保ちながら上っていった。時々何人かに追い抜かされたけど、気にせず同じペースで上った。前を走る人は時々ペースが落ちて歩いていた。そのたびに距離が縮まり、あと少しで追いつくくらいで回復しまた走っていた。
できることなら追いつきたかったけど、無理せずペースを保ったおかげで東山山頂公園まで歩かずに到達できた。
そして、無理せず上りきったおかげで、体力に余裕を持てていることに気付いた。
山頂公園には小さなエイドがあり、ちょっとした食べ物も用意されていたが、立ち止まらずに通過した。
小さな負けず嫌いが顔を出した瞬間。

そこから清水山は緩やかな傾斜で疲れていたもののペースを保ったまま走れた。
清水山の麓には清水寺がある。姿は見えないけど、そんなところを走っているのがどこか面白く思えた。
下りにさしかかると気持ち的にも楽しく、足取りも軽快に気持ち良く下っていった。


国道1号線~稲荷山~伏見稲荷大社(ゴール)〉

清水山を下ると国道1号線の下を通る地下道をくぐり、側道へと進み、その脇の林道へ入っていく。
緩やかな山の中を走ると住宅街に出た。
軒先にランナーに「ご自由にどうぞ」と飴が置かれていたり、人の温かさを感じる。
しばらく住宅街のアスファルトの道を進む。
山の中は足元に神経を走らせるからかあっという間に感じるのに、
住宅街は同じ距離でも景色に飽きてしまいとても長く感じた。
あと少しで泉湧寺のエイドだと言われても、そこからがまた遠かった。
やっとエイドにたどり着き、ポカリスエットとバナナをもらう。
少し息を整えまた走り出す。
そこからいよいよ最後の上り、稲荷山へと入っていく。
橋を渡ると登山口。その手前に誘導のスタッフの女性がおり、
「あとたったの4kmです!ゆっくり楽しんで走ってくださいね。」と言ってくれた。

その言葉のおかげでハッと、気持ちに余裕がないことに気付けた。
「そうだ、楽しまなくちゃ。なんのために走ってるんだよ。」
そう思った途端、気持ちも楽になり、足も軽くなったように思えた。

残り2.5km。前を走る男性を追い抜き、しばらくその人が後続で続いていた。
すると「もしかしたら4時間切れるんちゃうか?」と話しかけられた。目標はただ自身最長距離を走り抜くこと。それ以上は考えていなかった。ふと時計を見ると12時45分。もしかしたら本当にサブ4できるかもと思いペースを上げた。

まだこんなに体力が残っていたのかと思うほど、息は荒いながらも夢中で走る。稲荷山の最後の上りは傾斜がきつかったけど、木にくくり付けられていた沢山の応援のプレートが元気をくれた。
急登を上りきるとあとは下るのみ。
足もまだ行ける!あとどれだけ残っているか分からないけどとにかく脇目を触れず走った。

鳥居が見え、残り…2km…1km。
薄暗くて細い石畳の道を進む。くねくねと思いの外長く、後続の人に追い抜かれないようにひたすら走る。
ラストスパートに飲んだジェルが効いているのか、まだ体に力が入る。
視界が開けてスタッフの人達が見えた。
伏見稲荷大社のゴールが見え、自分の名前が呼ばれる。
レースで1番興奮する瞬間。やりきった!

 

f:id:l-ichigo:20170307213217j:image
タイムは3時間55分18秒。
初めて30kmという距離を走り切れた。
そして初めての距離でサブ4を達成できたことができた。
やればできるんだ!

もちろん、上には数え切れないほど沢山のすごい人がいるけれど、今の私にとってのベスト。諦めず全力を出せたから、「おつかれ、わたし!」とこの日は自分を褒めてあげました(^^)


だけど、ここまで走れるようになったのは、一緒に走ってくれる人たちがいて、楽しく走れるから。
一人だとこんなに楽しく走り続けることはできないだろうなと思う。1人で走るのも好きだけど、孤独では戦えない。応援してくれたり、頑張ってる人が近くにいるから、私も力をもらえるのです。
改めて、人との繋がりに感謝です。ありがとうございました!